
以前、松戸市の主催する研修会に参加した時に主催者の部長さんがあいさつの中で、「最近、ふつうという言葉を使わなくなった」と述べていました。私自身も通常学級のことを普通(ふつう)学級と呼んでいるのを聞くと、とても気になります。今では通常学級と呼ぶのが一般的だと思います。世の中の人々は「ふつうはこうするものだよ」「みんな、ふつうはできるよ」など、つい口にしてしまうことがあります。けれども、その「ふつう」とは、いったい誰が決めたものなのでしょうか。子どもが靴を履くのに時間がかかるとき「ふつうはもっと早く履けるよ」、友だちと同じように遊ばないとき「ふつうはみんなと遊ぶよ」、給食を全部食べられなかったとき、「ふつうは残さず食べられるよ」……。思わずそんな言葉を耳にします。
「ふつう」という言葉の裏には、「それ以外はおかしい」「できないのは問題だ」という無意識のメッセージが隠れているように感じます。そして、そのメッセージは、子どもの心に静かに、けれども確かに届いてしまう可能性があります。子どもは一人一人みんな違います。得意なこと、苦手なこと、好きなこと、嫌いなこと。朝が強い子もいれば、ゆっくりエンジンがかかる子もいます。にぎやかな場所が好きな子もいれば、一人で静かに過ごすのが好きな子もいます。そのどれもが、その子らしさです。
「ふつう」という言葉を手放すと、見えてくるものがあります。それは、子ども一人一人の個性であり、成長のペースであり、今この瞬間の姿です。その子らしく育つことこそが、子どもにとって本当に必要な環境なのではないかと思います。もちろん、社会の中で生きていくうえで、ある程度のルールやマナーを身につけることは必要です。でも、それは「ふつうになる」ためではなく、自分らしく生きる力を育てるためにあるのだと思います。
北丘幼稚園の職員は、子どもたちの今の姿を大切にしています。泣いている子には、泣く理由がある。動き回る子には、動きたい気持ちがある。黙っている子には、言葉にならない思いがある。幼稚園はそのすべてを受け止めながら、子どもたちが安心して自分自身を出せる場でありたいと願っています。保護者の皆さまも、「ふつう」という言葉にとらわれすぎず、お子さんのありのままを見つめてあげてください。「うちの子は、ちょっと変わってるかも」と感じたときこそ、その子の魅力が輝くチャンスかもしれません。「ふつう」ではなく、「その子らしさ」を選択することは、親にとって勇気のいることかもしれません。でも、その先には、自由であたたかな世界が広がっています。




