今回も前回に引き続き、オリンピックの話題ひとつ。「メダリストの学ぶ前人未到の結果を出す力」という松原孝臣さんの著書から引用したいと思います。2012年のロンドンオリンピックのウェイトリフティングという競技で銀メダルを獲得した三宅宏実選手の話です。三宅選手は、父がメキシコオリンピックの銅メダリスト、叔父がローマオリンピックで銀メダル、東京とメキシコオリンピックで金メダルを取ったいわゆるオリンピック一家の中で育ってきました。
三宅選手は、ロンドンオリンピック以前の初めて出場したアテネオリンピックでは9位でした。4年後の雪辱を期して臨んだ北京オリンピックでは本来の力を出し切れずに6位にとどまってしまいました。北京でのオリンピック後に何が足りなかったのか、どう変わっていけばよいのかを考えました。そして、行き着いた答えは、今までの自分は、父に頼りすぎていたということでした。父はオリンピックの銅メダリストで、競技を始めてからずっとコーチでした。父の言われるがままに練習をこなしてきました。三宅選手は父に頼りすぎて、自分から取り組む積極性に欠けていたことに気づいたのです。そのことが試合で力を発揮できなかったのではないかと分析しました。それからというもの三宅選手は、自主的に自分の意志で日々練習を重ねていきました。自主性を身につけると、父との関係にも変化が表れ、自らアドバイスを求めるようになりました。その結果が、見事にロンドンオリンピックの銀メダルに結びついたと言えます。
自らの積極的な意志のあるなしで、物事への取り組み方は変わるし、アドバイスの受け入れ方も変わるものです。自ら求めたアドバイスなら身につきます。三宅選手には人に頼っていては勝てない、自ら取り組むことの大切さについて教えられました。